…好きだったから。
高校生活の中で、窓のずっと向こうから見せる、聡の笑顔が好きだった。
陸上部だった聡の、綺麗なフォームで軽やかに走る姿を、ひっそりと写真部のわたしは部室から盗み見しているのが好きだった。
同じクラスになったことはなかったけど、2年前からわたしは聡が好きだった。
新聞部の依頼で、陸上競技大会の模様を写真に収めるために、カメラを構えてフィールドの端っこにスタンバイしていた。
一人2種目参加が条件の陸上競技。
急にざわつき始めた競技場内。
『これより2年1200メートルリレーを開始します。選手の皆さんは南口に集まってください』
個人より団体戦の方がやっぱり盛り上がり、1200メートルリレーが始まる間際。
[南口ってどこだっけ?]
慌ただしく走ってきた彼は、わたしの腕を掴み、慌てた様子でそう聞いた。