破   壊
殺 人 鬼
 いくらか和らいだ気分で風呂から上がった。ソファに放り投げたままになっていた鞄に目が自然と行く。

 中には彼からの手紙がある。

 読もうか読むまいかと迷っていた。

 冷蔵庫から飲みかけの白ワインを取り出し、タンブラーに注いだ。

 一息で半分程飲み、勢いを付けるかのように鞄へ手を延ばした。

 硬い四角張った文字。

 彼の印象からは想像がつかない癖字だ。

 封を切り、中から何枚もの便箋を取り出す。

 便箋の裏側に迄文字の跡がくっきりと浮かぶ位、筆圧の強い文字に、私はいつの間にか引き寄せられていた。





< 26 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop