precious one
いつもは騒がしい稔太が、
黙ってあたしの手当てを受ける。
それだけで、あたしも少し狂っちゃいそうだった。
「稔太、静かだね」
「何? 騒いでほしい?」
「それも困るけど…」
上から降ってくる稔太の声に、少し戸惑ってしまう。
だって稔太、普段と違うんだもん。
変に緊張して、多分手も震えてる。
「愛花、不器用だな」
「うるさい」
なかなか終わらないあたしに、稔太が笑いながら言った。
こっちは必死でやってるのに、不器用なんて失礼なやつ。
けどこれも、稔太の優しさ。
変な沈黙を作らないようにしてくれたんだよね。
だって稔太、いつもと雰囲気が違うから。
それに戸惑うあたしに、多分気付いてる。