君らのおかげで
清と星と話している自分を、ものすごく変に感じていた。あたしはこの2人が苦手だったから。
だから今も、イマイチ素を出せていない。

「ヤベ、そろそろ俺帰らねぇと!!」

焦りながら星が言う。

「じゃあな!!」

そう言うと、星はクロのリードを放り投げ、一目散に駆けて行った。
残されたあたしと清に、重い空気が流れた。

「…麻は、帰らなくていいの?」
「あたしは…帰っても誰もいないし」
「兄弟とかいなかったっけ?!」

驚いている清は、ホント麻のこと何も知らない、と言いたげな顔をしていた。

「うん一人っ子。親も12時過ぎないと帰ってこないし」
「…それって、今日も?」
「? うん…」
「じゃあ来て!!」

イタズラに笑うと、清はあたしの腕を引っ張った。
夜の道を軽快に走り出す。シロとクロは大はしゃぎでついてくる。一方あたしは、驚きで何も言えないまま走っていた。

「ちょ、どうすんの、どこ行くの」

信号でやっと止まった清に、あたしは息を切らしながら聞いた。

「いいからおいで」

腕を掴む手に力がこもる。痛いほどなのに、どこか優しくて嬉しいのはなんでだろう…。
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