誓い
ふと、翔吾が口を開いた。

「…そうだ、さっき
クマ先生に会ったぞ。」

「え、ホント?」

クマ先生というのは、
双子が長年お世話に
なっている
かかりつけの医師。

昔は近くに住んでいて、
呼べば必ず来てくれた。

他の病院へ異動になった
と聞いていたが、
戻って来ているらしい。

「あぁ。
相変わらず元気してたよ。
ありゃ、当分は長生きするな。」

「あはは、そうだね。
小さい頃はクマ先生の
ヒゲ面見て大泣きしてたもん。
体も大きくて、迫力あったし。」

「デカイのは今でも
変わんねぇよ。
今日会っても、
相変わらず迫力あったし。」
「そうだよね。
あの先生が変わるわけないか。
相変わらず独身?」

「あー、訊いてないけど、
でもあの人に
奥さんが出来るの
って奇跡に近いぜ?」

翔吾もクマ先生に
対して酷い言い方である。

「あはは、それもそうか。」

そう返した圭吾は、
再び横になった。

「疲れたか?ゆっくり休め。」

「うん…。」

翔吾は弟には優しい。

たった一人の兄弟、

しかも双子の弟。

大事にしないはずはない。

圭吾に布団をかぶせ、
病室を出た翔吾は、
ひとつため息をついた。
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