引き金引いてサヨウナラ


自然と、美菜の視線が叶に向かう。


美菜は、叶にはあえて触れないようにしていたが、二人になるとそうもいかないように感じた。


触れないようにしていたのは、弘以上にショックだったからだ。


そしてそんな自分に混乱していた。


だからつい、語気荒く叶につっかかってしまう。


「叶は? 叶も同じ?」


叶も弘も、昨日、一度は自分の言葉に納得したように感じたのに。


今日になったら申込みすると決めていたことにも腹が立って、余計に言葉が素っ気なくなる。


多分、自分に何も言わずにいたことが、一番ショックだったのだ。


弘は昨夜、晴香に電話で告げた。


だが叶は、美菜に何も言わない。


美菜に訊かれてから、ようやく反応を返しているだけ。


──終始、かやのそと。



美菜をなだめるように、叶は静かに微笑んだ。


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