引き金引いてサヨウナラ


「大切にしろよ」


並び立って突然そう言われ、叶は面食らった。


しかしすぐに美菜のことだろうと理解し、「あぁ」と返事をする。


そんな叶に、和也は

「自分のこともだぞ」

と言い、拳で叶の胸をグッと押した。


叶はその拳を受け止め、言葉に少し驚きながらも、「あぁ」と和也に向かってやり返した。


これ以上、悲しい顔を見たくない――

和也の態度がそう物語っていた。


「……戻ろう」


叶と和也は、力強く一歩踏み出した。


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