引き金引いてサヨウナラ


美菜の小さく震える肩と、消え入りそうな声に、叶はそっと手を伸ばした。


「ごめんね、美菜」


そう呟いた叶に、美菜は叶の決心を覆せないことを悟る。


美菜はぎゅっと手を握り締めると、叶から目をそらし、身を翻して走り去ってしまった。


叶は美菜の後ろ姿をぼんやりと眺め、ゆっくりと足を踏み出した。




「振られたな」

叶の後ろから、落ち着いた声がかけられた。


叶が無言で振り返ると、優しい目をした和也がこちらに向かってくるところだった。


「……いつから」

いつから自分と美菜の会話を聞いていたのか、という目を向けると、和也は「さっき」とだけ答える。


弘の病室を出てからだろうと見当がつき、叶は困った顔で笑った。


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