引き金引いてサヨウナラ
弘が小さな声でそっと、美菜に話し掛ける。
「晴香といると、退屈しないだろ?」
この間、『つまらない』と言ったことを、弘は覚えていたらしいと美菜は気付く。
確かに、遊んでいれば退屈を感じない。
遊園地に来たのなんて久々だし、例え遊園地でなくとも、晴香とならどこでも楽しめると思う。
何気なく晴香を見ると、美菜の視線に応えるように、にこ、と笑いかけてくれた。
目線がすぐに合ったことで、もしかしたらずっと見てたのかも──と思う。
美菜はぎこちなく笑顔を返した。
晴香といれば退屈しない。でも、そうじゃない――
美菜は言葉を飲み込んで、弘にも、曖昧ながら微笑んで見せた。
弘は美菜の心のひだに気付くはずもなく、笑顔にホッとした様子だった。
美菜はそんな弘の仕草から、自分を遊園地に誘ったのは弘だったのかもしれないと思った。
直接誘ったのは晴香だけど、弘が晴香へ、誘うように進言したのかもしれない。