引き金引いてサヨウナラ
美菜が教室に入ると、数人の女の子が、美菜の登校を待ち構えていたかのように、わっと取り囲んだ。
挨拶をしたかみたかで一斉に話し掛けてくる。
「昨日、超イケメンといたって?」
「誰よ誰よ紹介してよ」
きゃあきゃあと騒ぐ女子を、事情の飲み込めていない男子が、何事かと見ている。
美菜はうんざりした顔をしながら、昨日会った女の子たちに目をやった。
彼女たちは悪びれることなく、顔を輝かせながら美菜に近寄る。
美菜は聞こえよがしに大きな溜め息をつき、言った。
「別に何でもないよ。
晴香のいとこで、こっちに引っ越してきたから案内してただけ」
それで皆が納得したとは言い難いが、美菜が話しは打ち切りとばかりに席につくと、彼女たちはとっかかりを見いだせぬ様子で、互いに顔を見合わせた。