Melody Honey
ずっと前に聞いた曲とは、また違うメロディーだった。

悲しいメロディーだった。

そのメロディーに押されたと言うように、また私の目から涙があふれる。

この悲しいメロディーは、桐生の今の気持ちなの?

その気持ちに、私はどう答えればいいの?

「――桐生…」

名前を呼んでも、返事が返ってくることはなかった。

ああ、そうかと…私は気づいた。

私、桐生のことが好きだったんだ。

今更で、しかもこんな状況になってから自分の気持ちに気づくなんて…。

私は一体、何をしているんだろう?

「――最低…」

自虐的に呟いても、気づいてしまった気持ちはどうすることもできなかった。
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