KEEP OUT!!
ぼんやりと、親友の席に視線を投げる。
けれどそこには八重ちゃんの姿はない。
今彼女はピアニッシモで新しいレシピを勉強中のはずだ。
昨日、亮平の家を出た別れ際、
『私、やっぱりきちんと告白するから』
あのときの強い決意を灯した眼差し。
口にはしなかったけれど、戸惑いが消えないわたしに対して「紗智ちゃんは?」と問いかけているように見えた。
でも、わたしはそれに対して何も返すことが出来なくて、
『うん……』
そう答えるのが精一杯。
そんなわたしに歯がゆさを感じたのか、唇を噛みしめた八重ちゃんはくるり、と背を向けると、
『亮平くんにずっと覚えておいてもらえるように、とびきりな料理、プレゼントしようと思うから。しばらくピアニッシモ通いで学校以外は話さなくなると思う……』
煮え切らないわたしに愛想をつかしたのかもしれない。
振り返ることなく歩き去る彼女にやっぱり何もいえなかったわたし。
「わたしは……」
どうすればいいのかな。
どうしたいのかな。
自問自答の繰り返し。
答えが出ないことをわかっていて、それでも悩まずにはいられなくて。
「……う、うぅぅぅぅ」
わたしは……。
「うぅぅぅぅぬぁぁぁぁぁ」
わたしは──
「あぁぁぁぁもぅ!!」