KEEP OUT!!

 それからの日々は本当にあっという間に過ぎていった。

 わたしは絵とバイトに忙しく。

 八重ちゃんは料理の腕を磨くので忙しく。

 亮平は留学前に少しでも英語力を上げるために忙しく。

 おかげで良いか悪いかは別として、互いのぎこちない空気を気にする暇もなかった。

 別にそれぞれがそれぞれを避けていたわけじゃない。

 ただ、中途半端に関係を取り繕うよりも、優先すべきことがあると感じていたからだ。


──夏休みまで、そう長くはない。


 それが共通意識であると、長年の付き合いがなんとなく知らせてくれていたからだと思う。

 とはいえ。

 ひとつだけ、わたしにはしておかなければいけないことがあった。

 それは亮平──ではなく。

 八重ちゃんとのこと。

 亮平が旅立つ前に、彼女と話をしておかなければ。

 あの日、背中を向けられたときからまだほとんど話をしていない。

 怒らせたままだった。

「確か今日ピアニッシモにくるはずだったよね」

 そこできちんと話をしよう。

 わたしはどうするか。

 このまま呆れられていては八重ちゃんも気持ちが落ち着かないだろうし、わたしだって気持ちが悪い。

 陰でぶつぶついうのもいわれるのも嫌いなのだ。


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