KEEP OUT!!

 でもそれは、互いに大切だと感じられる相手だから、いえることなんじゃないだろうか。

 あのキスシーンを“裏切り”だと感じたわたしに、その資格があるんだろうか。

 まゆみさんの言葉が理解できないわけじゃない。

 けれど、それ以上に、わたしはわたしを許せなくて。

 それを伝えるとまゆみさんに、

「何いってんの」

 キョトン、とした顔で返された。

「ちょ~っと先をこされたからって、すねてる場合じゃないでしょ?」

「で、でも!! キスしてたってことは、つまり、もう付き合ってるってことじゃないですか!」

 途中参加で、しかもレースは終わったのにそれに“いちゃもん”つけるなんてこと、

「あ・の・ね。物事のゴールは自分で決めるものなの。ルートだって円周率だって、自分で見切りをつけなきゃず~っと先まであるでしょう? それとおんなじこと。ね?」

 本当に、まゆみさんがいうとなんだかそれがすごく当たり前のことのように思えてくる。

「じゃ、そろそろわたしはピアニッシモにいくね?」

 まだ、どうするべきかの答えは出ていない。

「あ、はい!」

 それでもどうやら、“終わり”じゃないらしい。

「帰り、大丈夫?」

 苦しいだけかもしれないけれど。

「だ、大丈夫です! あの!!」

 つらいだけかもしれないけれど。

「ん?」

 先はまったくみえないかもしれないけれど。

「今度から、“まゆねぇ”って呼んでもいいですか?」

 とにかく、悩んでみよう。

「ん~ダメねぇ……」

 悩まなければ、答えはでないのだから。

「そういうところが、みずくさいっていうのよ~」

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