KEEP OUT!!
「は!?」
みるみる内に亮平の瞳に困惑の色が拡がって行く。
「あ、や、おまえ、それは……」
混乱した頭で必死に何かいおうとしつつも言葉にならず、顔をしかめて頭をかく亮平。
窓の外でひときわ大きくなる雨音。
「あ、あのさ──」
「っぷ。あっはっはっはっはっ!」
「は、は?」
「や、ごめんごめん。冗談よ~冗談!」
お腹を抱えてわたしは、笑った。
「もぅ、本気にしないでよ~。っはっはっはっ。ていうかほら、見ての通りわたしは平気だから、アンタそろそろ学校戻りなさいってば」
雨音にかき消されないように大きく大きく声を張り上げつつ、亮平の背中を押して部屋の外に追い出す。
「え……でもさ」
「おっとっと、傘忘れないようにしなきゃね」
ぽんっ、と手を打ってから小走りで窓に近寄ると、外の壁に立てかけておいた傘と靴を大げさに身を乗り出して取って、
「ほい。さ、帰った帰った」
それを押し付ける勢いそのままに玄関まで押していく。
「ちょっ、紗智! さっきの──」
「あのね、わたし今日“アノ日”なの。わかる? わかんないよね、男の子はね。つまりね、そういう理由でキツいの。だからね、はい。1名様お帰りで~す」
靴と一緒にカレを放り出したわたしは素早く玄関の鍵を閉めた。
「お、おい! 紗智!!」
扉の外で叫ぶ亮平。
わたしはその声を振り切るようにして2階へかけ上がり、自室に逃げるように戻った。
窓の鍵を閉め、カーテンも閉め……。
「…………」
亮平がしつこく部屋にやってこないことを耳を澄ませて確認する。
“アノ日”って言葉はちょっとした魔力があるらしくって、しばらくしてもカレが再びやってくることはなかった。
「は、はは……」
一度はずいぶんと水気をとったはずのカーペットが、また濡れていく。
「あの馬鹿のせいで部屋がめちゃくちゃだぁ……」
さっき身を乗り出したときに大雨に打たれたせいだ。
「えっと……タオル、また持ってこなくっちゃ」
前髪を伝って、雫が零れ落ちる。
「はは……ほんっと、馬鹿みたい……」
頬を伝って、雫が“流れ”落ちた。