KEEP OUT!!

「思い立ったらすぐ行動、ってのはな、別段悪かない。ただな、それと“答えをすぐに出したがる”ってのは別のもんだ」

 うっ……。

 確かにわたしってつい突っ走る癖がある。

 でも、草にぃのいう“違い”ってなんだろう?

 わたしが眉を歪ませて小首を傾げると、

「例えるとだな……」

 おもむろに豆をひと粒カウンターに置き、

「うまい珈琲を淹れるにゃどうするよ」

 そう聞いてきた。

「え……っと、いい豆を仕入れて、フライパンで煎(い)ってから挽(ひ)くでしょ? それからお湯を沸かして……」

 いつだったか叔父さんに教えてもらったことをひとつひとつ思い出す。

 ところが草にぃは片ひじをついて「はんっ」と鼻を鳴らすと、

「そうじゃないなぁ」

「あいたっ」

 わたしのおでこを軽く小突いた。

「いいか? うまい珈琲ってのはな、まず相手にうまいと思って欲しいと願うことから始まるのさ」

「願う?」

「そ。決して味を押しつけず、相手が1番うまいと感じるものが出来るよう願う。それが1番大事なのさ」

「…………」

 それってやっぱり、自分の主張を抑え込むってこと?

 確かにある気持ちを“なかった”ことにするってこと?

“好き”って想いを──

「こ~ら。勘違いするんじゃぁないぞ」

「え?」

「相手を思うってぇのは、何も自分の信念を曲げたり、気持ちを押し殺したりするってぇことじゃない」

「でも……」

「ようは、な。“アピールの仕方”の問題さ」

「? どういうこと?」


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