先輩と私

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「もしもし、今日、俺、他で飯食うから。・・・・・・ん、そう、あいつんち。・・・今日、一人らしい。・・・・・・言ってみたが迷惑かけんのがやなんだってよ。・・・・・・うるせえ。・・・あー、分かった。分かった。もう、切んぞ」

先輩は携帯を鞄の中に戻した。
「先輩?」

そうしているうちに、私の家の前に着き、先輩が家の門を開けて中に入って行く。

「鍵」


先輩に言われて、慌てて鍵を取り出して、ドアを開ける。先に家の中に入り、後から先輩が入ってくる。
ドアが閉まるといきなりキスされた。荷物が肩から地面に落ちた音がした。
驚いて、抵抗するが、運動部の先輩には効果はない。こういう時、本当に怖い。先輩は、男性で私の事をどうにでもできるのだ。涙が出てきた。先輩は、きっと涙に気づいている。苛立ったように、口の中に舌をねじ込んできて、私はなすがままだ。その間も涙が止まらない。

先輩がようやく離してくれた時には涙で顔がぐちゃぐちゃになってるのが分かって、それに重ねてこんな事されるから、私はどうしようもなく恥ずかしくなる。先輩は、そんな私の顔を見て、喜んだ顔になる。先輩は、そのまま、何も言わずに鍵をかけるとリビングに入っていった。

先輩が高校生になってからこういう行為が増えた。だから、先輩と私が付き合ってるのか尋ねてみたのだが、告白したことの無い二人がなぜ付き合っていることになるのかが分からないと言われた。
その上、私からしてみようとすると、ひどく不愉快そうな顔になる。
理解できなくて、私はいつも困る。先輩はどうしたいんだろう。先輩の事は人より分かっているつもりだけど、私に向けてくる先輩の気持ちだけはどうしても分からない。
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