依存ごっこ
コーヒーと語らい ~小雨~

結局パーティーは陽が昇る頃まで続いた。

あの雨は嘘のように、キラキラした朝だ。

私も彼もまだ元気だった。

レンタルDVDの返却を忘れていた私は、

一度家へ帰って その足でレンタルショップまで行くことにした。

うちの最寄のレンタルショップは 山手線の1駅離れたところにあって、

歩いて行かなければならないのだが、

彼もその早朝の散歩に付き合うと言う。

お互い喋り足りない気がしていたのか、

高級住宅街を通り過ぎながら 延々と会話をした。

レンタルショップでの用事を済ませた後もまだ喋り足りず、

お互いに伺う事もなく自然な流れで喫茶店へ入った。

恋愛感・価値観・趣味趣向、あらゆるカテゴリーの話をした。

彼も私も それでもまだ...といった感じに、

冷め切ったコーヒーの 残り数センチを飲みきらずにいた。

何時間経っただろうか?

彼の携帯が鳴った。

仕事の電話だった。

そこでようやく喫茶店を後にする事になった。

外に出ると またパラパラと雨が降り出していた。

赤信号が青になるのを待っていた時、

その時彼の両手が 私の両肩にそっと触れた。

「濡れるよ」

と屋根のある方に寄せてくれたのだ。

なんとも言えない柔らかくて繊細な手だった。

そして私は こっそりと一歩 彼の方に近づいた。

彼は優しく私の肩を抱き寄せてくれた。

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