依存ごっこ
ふたりごと ~雨男~
タバコを吸いに外に出ると、

突然雨が降り出した。

大粒の雨だ。

真夏の夕暮れ時に 突然街を襲う 夕立のような、

突然で激しい雨だ。

彼に促され 大きな屋根のある隣の建物の前まで走った。

ほんの数メートルの距離のわりに、だいぶ雨に濡れた。

「俺、雨男なんだよね...」

そっか...

何がおかしいわけでもないけれど、なんだか二人で笑った。

それから彼は、ガラムの香りを漂わせながら話し出した。

「あんな失恋話を 簡単に初対面の人間にペラペラと喋れるヤツ、信じられねえ。」

それはパーティーでの話。

とある男性が、最近フィアンセに逃げられた話を、

初対面の人たちもいる前で、延々と話していたのだ。

私はその男性とは初対面ではなかったので、度々その話を聞いていて、

またか...という感想しか抱かなかったが、

ガラムの彼は、そんな風に思ったらしい。

私は彼のその言葉を聞いて 一瞬でいろんなモノを汲み取った。

彼の影をそこに感じた。

触れてはいけない何かを感じた。

彼の異様オーラやバリアの意味もわかった気がした。

それから3本もタバコを吸いながら 話続けた。

知的レベルの高い彼の話はとてもセンスがよかった。

ようやくタバコを吸い終えた私たちは...

というより喋るためにタバコを吸い続けていた感じではあったが、

部屋へ戻ることにした。

その瞬間...

本当にその瞬間、

雨が上がったのだ。

さっきまでの大粒の雨は嘘のように、

空からは一粒の水滴も落ちてこない。

真の雨男だった。

二人で大笑いした。
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