ケイカ -桂花-
ゴツッ。

痛っ。

鈍い音と共に頭に痛みが走った。

あ、制服のままだ、私。

ぶつけたガラスに映った自分を見て思った。

着替えなきゃ、・・・あ、ないか。

今私が持っているのはポケットの中のグロスのみだ。

カバンも着替えも全部教室に置いたまま、携帯さえもない。

どうやってあそこからここまで来たのかは覚えていない。

だけど今、私は、学校の自分の席で授業を受けているのではなく、ケイの店の前に座り込んでいる。

この現状が、さっきの事を事実だと明白に証明している。

真っ暗な店内が透明なガラスを鏡に変えているせいで、唇のつやつやまで映し出し、急いで袖で拭った。

制服の袖で安っぽく光ったラメから目を逸らすと、また、同じ所を同じ場所にぶつけた。
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