ケイカ -桂花-
何かの間違いに違いない。

きっとケイが鍵を失くして、しょうがなくあれで代用したんだ。

あの部屋だもん、鍵なんてすぐどっかいっちゃいそうだし。

ドアの向こうにはゴミ袋や物が散乱してて、その中に鍵も紛れ込んでるんだ。

部屋の掃除も手伝ってやるか、店へと走りながらそう決めた。



うそ-----

ガラスに張り付いて、バカみたいに何度も目をこすった。

真っ暗な店内。

押しても引いても、開かないドア。

どんどん大きくなっているドキドキと荒い息は、走ったせいなのか、それとも?

まだ来てないんだ、とは思えない。

店内は、タオルもケープもなくがらんとしていたから。

壁の鏡とその前に取り付けられた大きなチェアだけが、ひっそりと残っているだけだった。

ここが本当にケイの店?

毎日通って、働いて、掃除した、私の大切で大好きな店なの?
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