ケイカ -桂花-
『ギブ アンド テイク。居場所をもらって、その代わりに私達は信者でいる、って事。
18になったら信者プラスお金』

「間違ってる、と思う」

『どこが?』

「分からないけれど、洗脳とか」

『洗脳なんてされてないし。今水商売で働いてる人だって強制されてるわけじゃない。むしろ進んでキャバ嬢とかやってて楽しそうだし』

「でも騙されてるんだよ?お金巻き上げられてるんだよ?」

『楽しそうに働いてる大人なんて見たことある?ここにいたら、心が満たされてストレスなんて全然なくて。それと引き換えにお金を寄付するのって、騙されてるとは思わない。
仕事で溜まったストレス解消の為に、エステ行ったり旅行したりするのにお金を使うのと何が違う?同じでしょ』

Dの力説に一瞬そうなのかな、と思いそうになるけれど、やっぱり何かが引っ掛かる。

まず、Dは途中から矛盾している。

水商売で働かない、といいつつ、働いている人を肯定して、いい事みたいに思ってる。

スラスラと流れるように出てくる言葉は、それらしい筋を通しているけれど、どこか空々しい。

全然自分の言葉じゃないからだ。

心から出た言葉じゃない。

多分そこにいる人達から聞いた言葉だ。

それは、勧誘の為の言葉に他ならない。
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