ケイカ -桂花-
わっ、出た?

携帯を握った手の平に汗が滲む。

頭が真っ白になった。

そのまま息苦しい沈黙が数秒続いた。

物音1つしないけれど、電話の向こうの宮崎の存在だけは、はっきりと感じられた。

呼吸が聞こえてくるような沈黙。

宮崎の顔が鮮明に浮かび、益々声が出なくなる。

もう、いい、このまま切ってしまおう。

非通知だから私だとばれないし、息苦しい中でそんなとこだけは冷静だった。


『桂?』

「えっ・・・」

慌てて口を押さえたが、もう遅かった。

『なんだよー、イタ電かと思うだろ。あ、ホントにイタ電だった?』

「そんなこと・・・」

数日しかたってないのに、宮崎の声に懐かしさを感じるのはなぜだろう。
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