ケイカ -桂花-
十分後、完全に見失った。

さっきは確かに匂いのあった場所に戻ってみても、もう甘い匂いは消えていた。

冷静に考えると、あの匂いがケイの物である可能性は低い。

たまたま誰かが似た香水をつけて通っただけかもしれないし、こぼれた甘いジュースの匂いだったかもしれない。

どっちにしても、もうそれすら跡形も無くなった。

はぁ・・・。

何度ため息をついただろう、ここ数日の間で。

何度も胸が痛くなって、何度も落胆して。

でも諦め切れなくてため息が出る。

ずうっと、何かわくわくする様な事を期待しながら、何も無い日々を過ごしてきた。

そして、ケイと会って宮崎を好きになって。

期待していたよりもずっとわくわくして楽しかった。

でもそれは、待ち望んできたのもだと気付く間もなく、あっという間に全部無くなった。


♪~

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