ケイカ -桂花-
最後のお客さんが終わり、また店中をピカピカに磨き上げると9時を回った頃だった。

あっという間だったが、立ちっ放しだった足の疲労がその時間を物語っていた。

「お疲れ、これバイト代ね。送ってくわ」

白い封筒をカバンにしまいながらも焦っていた。

携帯の留守電を知らせるランプが、カバンの中でやけに明るく点滅していたからだ。

絶対お母さんだ。

遅くなるとか言ってなかったから、最低3件は入っているはず。

早く帰らなきゃ。

「1人で帰れるから」

まず1人になって家に電話だ。

なぜだかケイには自分が子供だって思われたくない。

かっこ悪いところは見られたくない、小さいけれど大事なプライドがさらに焦らせた。
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