Je t'aime?



「…楽しんでおいで、富士山」



プンプンしながら涙を拭いていた私に、ふいに祐太が言った。



私は、一瞬固まって、



「行ってもいいの?」



と聞いた。



すると祐太は、驚いたような顔をして、



「行かないつもりだったの?」



と逆に聞いてきた。



「だって、ウジェーヌと行くんだよ?」



「え?ふたりだけで行くの?!」



「…違うけど…」



そう言うと、祐太は、



「なんだ、びっくりさせんなよ~」



と言って、ピーチジュレのアイスティーを自分のほうに引き寄せて、食べ始めた。



「ふたりきりじゃないなら、どこでも行っていいよ。俺、そういうの束縛するタイプじゃないから」



束縛するタイプじゃないのは知ってたけど、今回ばかりはダメって言われると思った。



「祐太、ありがとう」



素直にお礼を言うと、祐太はちょっと照れくさそうに笑った。



そして、



「そろそろ出ようか」



と、席を立った。




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