Je t'aime?



実際、この気持ちは憧れなんかじゃないんだけど―



だけど、この想いは私の中だけの秘密にしようと思う。



どう転んだって、私はウジェーヌについてフランスに行くことなんてできないし。



そうすることが、私のためでもあるから。



それに、「憧れ」だとすることで、みんなに心配かけずに済むのなら、そのほうがいいとも思った。



目の前に現れた「金髪の王子様」に夢見ていた私を、現実に引き戻してくれた「黒髪の王子様」。



「あんまりドラマチックじゃないけど、それも素敵な筋書きだと思うよ」



と励まして(?)くれた紗江子にも、感謝しなくちゃ。



「で、さっきの話に戻るけど、今日は祐太さんが家に来るの?」



「そう。ママの料理が食べたいんだって」



「すでに家族公認だもんね」



「まあ、そうだね。ママも祐太のこと、気に入ってるみたい」



パパも晩酌に付き合わせたりしてるよ、という私の声と、あはは、と笑う紗江子の声が、ホームに響くアナウンスと重なった。








―こうして私は、日常を取り戻した。








< 174 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop