Je t'aime?
実際、この気持ちは憧れなんかじゃないんだけど―
だけど、この想いは私の中だけの秘密にしようと思う。
どう転んだって、私はウジェーヌについてフランスに行くことなんてできないし。
そうすることが、私のためでもあるから。
それに、「憧れ」だとすることで、みんなに心配かけずに済むのなら、そのほうがいいとも思った。
目の前に現れた「金髪の王子様」に夢見ていた私を、現実に引き戻してくれた「黒髪の王子様」。
「あんまりドラマチックじゃないけど、それも素敵な筋書きだと思うよ」
と励まして(?)くれた紗江子にも、感謝しなくちゃ。
「で、さっきの話に戻るけど、今日は祐太さんが家に来るの?」
「そう。ママの料理が食べたいんだって」
「すでに家族公認だもんね」
「まあ、そうだね。ママも祐太のこと、気に入ってるみたい」
パパも晩酌に付き合わせたりしてるよ、という私の声と、あはは、と笑う紗江子の声が、ホームに響くアナウンスと重なった。
―こうして私は、日常を取り戻した。