Je t'aime?
…異様に緊張した。
バスは狭くて、隣の席に座るとウジェーヌがやけに近い。
こうなるともう、「憧れの存在」とかごまかしてる場合ではなくなる。
隣ではウジェーヌがカバンの中を覗いて、ガサゴソやっている。
私はその隙に、平常心になるまで窓の外の景色を見て、深呼吸を繰り返した。
そろそろ平気かな、と思ったちょうどそのとき、
「ちょっとウジェーヌ、それで外歩くの~?」
という紗江子の笑い声が聞こえた。
なんだろう、と思って振り向いた。
そのとき、私の目に飛び込んできたのは…。
冷却ジェルシートを貼った、ウジェーヌ…。
思わずブッと吹き出してしまった。
なにをガザゴソやってるのかと思ったら…。
「それ貼ったまま行くの?」
ウジェーヌは満足げにニコニコして、
「そうだよ、レイナもいる?」
と、箱ごと私に手渡してくれた。
でも、
「ふふ、ありがと、でもいらない」
と言って、また返した。