Je t'aime?
サァーッと風が吹き抜けて、私の数歩前にいたウジェーヌの金色の髪が揺れた。
そして、ウジェーヌの視線の先、遥か向こうには…―
富士山。
日本一の名峰が、くっきりと、堂々と、壮大な姿を浮かび上がらせていた。
私が思わず、
「うわぁ、すごい!」
と感嘆の声をあげると、それを聞いて振り返ったウジェーヌも、
「すごいね!」
とうれしそうに笑った。
そのさらに向こうからは、紗江子も感動の声をあげている。
「すごーい!こんなにキレイに見えるなんて思わなかった!」
河口湖は富士山に近いとはいえ、霧があったりするとすぐに見えなくなってしまう、とガイドブックにも書いてあった。
だからあまり期待しすぎないようにしていたのだけど、そんな必要なかったみたい。
だけど…。
「それにしても、この暑さじゃゆっくり見物もできない…」
そんな私たちを現実に引き戻す、太陽の光。
私たちは、まず美術館を見ることにした。