Je t'aime?



水に続いてウジェーヌが、ジェルシートをくれた。



バスの中で断ったせいか、ちょっと遠慮がちに差し出されたそれを、私は今度こそ受け取った。



「…気持ちいい~。あの日倒れたウジェーヌの気持ち、わかるよ…」



首の後ろに貼ったジェルが、急ピッチで私の体を冷やそうとがんばっているのを感じる。



ウジェーヌも新しいシートに貼りかえて、



「気持ちいい~」



と言って、ソファに深く座りなおした。



それから数分、私たちは言葉も交わさず、博物館の入口に展示してあるおもちゃを眺めていた。



…気持ちよくて、眠ってしまいそう…―



そんなふうに心地よくなった頃、



「お客様、大丈夫ですか」



と、受付からお姉さんが出てきて、私たちを気遣ってくれた。



いや、そもそもこのソファは、無料展示スペースのおもちゃを見るためのもの。



だから、休憩なんてされたら迷惑よ、と言いたかったのかもしれないけど…。




< 202 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop