切なさの距離~友達以上、恋人未満~





聞きなれない声で聞きなれた名前が呼ばれる。

湯川の顔を見る。


ああ、なるほど。

湯川の表情を見てあたしは察した。

分かっちゃった…あたし。


あの子がきっと湯川の彼女、裕実ちゃんだ。


浴衣姿の裕実ちゃんだと思われる子の隣には同じく浴衣姿の女の子。


裕実ちゃん、可愛いな。

あたしは座ったまま、裕実ちゃんを見ていた。



「裕実…来てたのか」


湯川が口を開く。


それと同時に


【ヒューーー ドーン】


と爆音とともに花火が打ち上がった。



それによって鮮明に照らされる裕実ちゃんの顔。


あ…れ?

裕実ちゃん…泣いてる…?


花火に照らされた裕実ちゃんの頬が濡れていた。



「貴斗…どうして…

何度も携帯鳴らしたのに…」


裕実ちゃんはそう呟くと走って行ってしまった。


一緒にいた友達が裕実ちゃんを追いかける。


でも湯川は動かない。






< 110 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop