切なさの距離~友達以上、恋人未満~
俺はひたすら走り回った。
でもどこにも裕実の姿は見当たらない。
どうして…
なんで…
もしかしてホントに襲われた、とか?
裕実の携帯を鳴らしてみるがひたすらコール音が聞こえるだけ。
俺は林に電話をかける。
「もしもし?」
『ごめん、今電話しようと思ってたところ』
林の後ろは静まっていて。
もうここにはいないのか?
『裕実、あたしの隣にいるから大丈夫。
今はそっとしといてあげて。』
林は俺の言葉を聞く前に電話を切る。
なんだよ…それ。
なんで裕実の声すら聞かせてくれないんだよ。
悔しくて。
自分自身に腹が立って、木を殴った。
「あれ?貴斗?」
そんな脳天気な声が聞こえて。
慌てていつも通りの俺に戻る。
「日向は?一緒じゃないの?」
やっぱりコイツらだ。
アキと増川。
ちゃっかり手なんて繋いじゃって。
お前らはラブラブなのかよ。
「悪い。俺、帰るわ」
そう言って俺は2人に背を向けた。
これ以上アイツらの姿を見ていられなかった。
仲のいいアイツらを見ていると苦しくて、悔しくなるだけだったんだ。