____苺の季節____

風と走る

休み時間の度、窓に張り付くようにして校門を通り抜ける鳴海を探してたあたしは、


3時間目が始まる直前、その姿を見つけ玄関まで走って下りた。




「どうした?」



言いたい事が山程あったはずなのに、鳴海の顔を見たら言葉が出てこなかった。


鳴海の澄んだ黒い瞳が、あの日、あたしのほっぺたを包んで笑ったお母さんにそっくりで何だか胸が締め付けられた。


でも、泣いちゃいけないって思った。




「……あ~っと、その顔はもしかして、みっちーが何か言ったな、あんのバカ先生」




「違っ……、先生は悪くない、


ダメなのはあたし、


その…、色々ごめんね、


あたし、全然ダメで、

だから……言えなかったんだよね?


鳴海のお母さんの事も、

鳴海の夢の事も、


あたし、自分の事ばっかでというか、


自分の事すらさっぱりダメで……、


恥ずかしいね、


あたし…鳴海のカノジョ失格かも」



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