光を背負う、僕ら。―第1楽章―
滝川先生がそのピアノのスタンバイをすると、小春ちゃんは音を確かめるようにそっとピアノの鍵盤に触れた。




♪―――……




あっ、この音……。




「すごく綺麗な音…。」




小春ちゃんは音を聞いて、ハッとしたように言う。



そしてもう一度その音を聞くために、また鍵盤に触れた。




♪~♪―――……。




「やっぱり、すごく綺麗な音がする。」




じっくりと耳に刻み込むように音を確かめた小春ちゃんは、確信を持ったように力強くそう言った。




「そんなに、綺麗な音かな?」



「聞いてる感じ、普通のピアノの音と変わらないみたいだけど…。」




少し興奮する小春ちゃんの周りからは、小春ちゃんとは正反対の意見が聞こえている。



そんな中であたしは、小春ちゃんとまったく同じことを思っていた。




確かにすごく、綺麗な音だった。



小春ちゃんが鍵盤に触れた瞬間に広がった、澄み切った音。



ぶれのないしっかりとした音が、さらにその音の綺麗さというものを引き立てているように思える。




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