あなたのペット的生活
「ほれ、文句言ってねーで行くぞ?危ないから掴んどけ」
松葉杖を持ってる腕でどこに掴んどけというのだろうか。
自転車に横向きに座らされ不安定この上ない。
「ほれ、俺の服掴んどきゃ大丈夫だろ?」
そっと、私の手を大きな孝ちゃんの手が覆い、孝ちゃんのお腹辺りの服を握らせられる。
「服、掴んだらシワになっちゃうよ?」
「そんくらいいいって。ほら、行くぞ」
孝ちゃんの笑い声は風に乗って去っていく。
ゆっくりと、風を切り、いつもよりも密着する体に心が震える。
いつもより、なぜか優しい。