あなたのペット的生活



それから数分がすぎ、ニコニコと笑うおばさんに今まさに着付けをしてもらっている。





「こんな古い浴衣でいいのかしらねぇ?」


そういうおばさんの腕には白地に紺の朝顔の模様の入った浴衣が提げられている。


「ううん。こういうの、すごく可愛い」


タンスの香りがほのかに香って、何十年も昔のものなのに汚れ1つない。

大事に着ていたって証拠だ。




「これ、おばあちゃんの浴衣?」


袖を通しながら尋ねるとおばさんは豪快に笑い出した。



「違う違う。これはおばさんの浴衣だよ。若い頃着てた浴衣なのよ」

「へぇ〜。じゃあおじさんとデートの時着てた浴衣なんだ?」


「デートってほどのものでもないけどさ。ふふふ」




おばさんは懐かしそうに目を細めると思い出し笑いをした。



「なに?なにかあったの?」



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