あなたのペット的生活
「実はねぇ、この浴衣を着て行ったら、当時はこういう柄が主流だったから、花火大会に行く人のほとんどがこんな柄の浴衣を来た人ばっかりだったのよ。
しかも夜だから暗くて顔なんてあまり見えないじゃない?
それで私……誰かと間違えられて男の人に手を掴まれてどこかに連れて行かれそうになったのよ。そしたらお父さんが血相変えて追いかけて来てくれてその男の人に『その人は僕の恋人です。気安く触らないでください』って息切らしながら言ってくれたの。
あの後のお父さんの顔……暗くてもわかるくらい耳まで真っ赤になってたのを覚えてるわぁ」
「……素敵だなぁ」
ふふふ。
とおばさんはそのことをまた思い出したのか幸せそうに微笑んだ。
おばさんが微笑むと少しだけ目尻が下って、孝ちゃんが笑った目元によく似ていた。