あなたのペット的生活
「孝ちゃんのバーカ」
「あぁ?!バカって言った奴がバカなんだよ」
と孝ちゃんは両手を頬にあてビョーンっと引っ張った。
「い……いひゃいよ。孝ひゃん……」
今は顔を見ないで。
夜だから見えないと思って油断してた。
孝ちゃんは一瞬だけど動きを止めた。
それから小さい声で「……バーカ」ってデコピンをして背を向けた。
「ふぇっ……っく、ひっく……」
孝ちゃんの温かい手の温もりも、なにも言わないその優しさも。
温かくて我慢できなかった。
自分の気持ちを隠して演じてきたのに、最後の最後で隠しきれなくなるなんて。
バカだよ。
本当に、バカだ。
こんなの孝ちゃんが困ってしまうのに、早く泣き止まなくちゃ。
そう思えば思うほど涙は滝のように流れ続け、その背後ではリーンリーンと鈴虫の声が綺麗な音楽になって流れ続けた。