らっこの国のお姫さま
夜の真っ暗な海はザザーン!ザザーン!と、岩壁に打ち寄せられます。

「もう秋きぅね……。」

姫はベッドの上に膝を付き、岩肌に手をかけ外を見ていました。

引いたり寄せたりする海を、姫は時々怖いと思ってしまいます。

波に襲われそうな、波に飲まれる気がするのです。

姫はクスンクスンと鼻水を垂らして泣き始めました。

「どうしたんだい?」

飼育係が心配してやって来ました。

「一緒に沿い寝してあげましょうか?」

タオルを渡されました。

「王子以外と、ベッドは共にしません!」

タオルで涙を拭きながら姫は言いました。

「ハイハイ。それなら私はこのソファで寝ますから。」

「ふん……勝手にするがよい。」

ソファで眠る飼育係を見ながら、姫は安心して眠り始めました。

さっきまで怖かった波音が、いつのまにか子守り歌になっていました。

そんな二人を見ながら海猫が笑って飛んで行きました。
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