らっこの国のお姫さま
姫は岩場を刳り貫いた、浜辺が見える部屋が好きで、いつもそこで波の音や、風や雨の音を聴くのが好きでした。

今日は元気がありません。

また王子が旅に出てしまったのです。

「次はいつ帰って来るのかなぁ……。」

昨日岩場で腰を痛めて、飼育係に手当てして貰ってからごろごろばかりしています。

いつも意地悪な眼差しの海猫も今日はおとなしくしています。

「王子……。」

楽しかった後の寂しさが姫は嫌いでした。

いつも陽気な姫もたまには元気がありません……と、思ったらスヤスヤ眠っていました。

今日は飼育係も外でお仕事があるので、じいやが覗いて姫に毛布をかけてあげました。

「まだお小さいのに、お寂しいでしょう……。」

じいやはそっと姫の枕元に、大好きな本と、小さなお人形を置いてゆきました。

きっと目覚めたら喜んでくれるでしょう。

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