らっこの国のお姫さま
「じぃ……。
じぃ……。
誰もいないのきぅ?」

いつになくらっこ姫が眉をひそめて、ショボショボしてじぃを探していました。

「姫!どうしたのです?」

じいがやって来ました。

「あのね…、地震があったのきぅ。
……。
それもあるけどね。」

じいは優しく笑ってしゃがんで姫の話を聞きました。

「あのね……。
こっちのおめめが痛いのきぅ。」

姫は右目の下を押さえました。

「どんなふうに痛いのです?」

「あのね、カウンターパンチをくらった感じなのきぅ。」

「………。
おや、本当ですね。
腫れてますよ。」

「本当!?
なんで?なんで痛いの!?
何で痒いの?」

「取り合えず炎症止めをさしましょうね。」

そう言ってじぃは姫に、数分おきに色々な目薬をさしました。

「かゆいの…きぅ。」

「辛抱ですよ。
掻いてはいけません。
さあ、もう一度おやすみなさいませ。」

じぃにトントンと背中を叩かれて、姫は眠りに落ちてしまいました。

「津波が来たらどうしようきぅ…。」

ふいに姫が寝言を言いました。

「お前らっこだろ!」

と、でも言いたげに海鳥が笑って飛んで行きました。
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