ジェネシス(創世記)
第六章 ダデの竪琴
第六章 ダデの竪琴 

「主はイスラエルの王国をあなたから取り上げ、あなたよりすぐれた隣人をお与えになる(サムエル記、上)」

 ウル国王のもとを去った司祭者ムルは、故郷のベツレヘムに帰郷していた。ある日、神官の使者が訪れた。

ウルの次期国王になる人物が、この町にいると告げた。竪琴をひく少年、羊飼いのダデである。ダデは、八人兄弟の末っ子だ。ムルは、父親エイを説得してダデを弟子入りさせるのであった。

「人は目に映ることを見るが、主は心によって見る(サムエル記、上)」
 
 羊飼いのダデは、投石が得意だった。ムルは、ダデを一組一一人の少年野球チームに、加入させた。監督は「ノギ」だ。

粗雑な皮を丸めてはボールを作り、木刀で打ち放つ。グローブは動物の革で作られた。ダデが投手に抜擢されると、試合の勝率は格段と上がった。けれどもこの時代、ルールはまだ確立されてはいなかった。

 ある日ダデは、エルサレムの宮殿に招かれた。それは、病に伏せていたウル国王の目の前で竪琴をひくことだった。

ダデの音色の評判が、宮殿にまで届いていたようだ。元気をつけさせるために、従臣たちが神官と司祭者に相談して決めたようだ。

「音楽は胸をなごめ、岩をやわらげ、節ある樫の木をも曲げる魅力をもつ(コングリーヴ)」
 

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