ジェネシス(創世記)
私の家族は、父イムの遺体を引き取り、エジプトを急いで離れた。馬車を走らせて、逃亡した。

私は、イムの遺体をとある丘の上に埋葬することにした。父が毒殺されてから三日後、その時だった、奇跡が起きた。

「光あれ」

「主」は、父を見守っていた。遺体を葬る直前、父は息を吹き返したのだ。復活した。今まで、昏睡状態(意識が消失すること)に陥っていたらしい。死んだと思っていたが、父はずっと眠っていたのだ。

 父は毒草を研究していたが、調合の分量によってそれは薬草にもなったのだ。その植物は「ケシ」と呼ばれた。

未熟な果実の乳液から、アヘン・モルヒネを精製していたようだ。鎮痛作用(痛みをしずめること)および、気分をさわやかにしてくれる効果もあった。バール将軍は、配合を間違えた。ワインに入れたのは、結果的には睡眠薬となっていたのだ。

 私は家族をともなって、祖先の土地ケインに移り住んだ。私の子供たちや孫に、改めてノエルやラエル人のたどった歴史を、伝承しなおそう。

「主は必ず、あなたたちを顧みて下さいます。その時は、私の骨をここエジプトから携えて上って下さい(創世記)」

「あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四00年間奴隷として仕え、苦しめられる。彼らは多くの財産を携えて、脱出するであろう(創世記)」

●「第四章 モズの言葉」に続く。

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