ジェネシス(創世記)
第五章 英雄たち
第五章 英雄たち 

「彼らはあなたたちと隣り合わせとなり、彼らの神々はあなたたちのワナとなろう(士師記)」

 私はモンの従者であり、幼少期からの親友でもある。国王モンは病に倒れた。愛する家族に見守られながら、「主」のもとへ赴かれた。私はモンのためにも、「聖書」と称して祖先たちの偉業を、パピルス(水湿性の多年草)に書き記そう。

 女性指導者、ディーラ
「地は震え、天もまた滴らせた。雲が水を滴らせた(士師記)」

 ラエル人はケインの土地を支配していたが、それも長くは続かなかった。ケインの土地を、パレス人が襲来してきた。先祖たちは必死に戦ったが、孤軍奮闘することが多かった。

神官たちはその敗因を分析した結果、「統率者」がいないことに原因があると、結論を下した。

 神官たちは、星占いで「士師(民衆の指導者)」を選任した。特になぜか、欠点の多い人物を選んでいる。

心身ともにたくましい者が、試練に耐え忍び逆境に打ち勝った者を指導者として、英雄として認めた。家督相続のある長兄は、選ばれることはなかった。

 ラエル人の一二の士族から一名ずつ、指導者が現れた。特に知名度が高く活躍したのは、女性のディーラ、貧困家庭のオン、売春婦の息子エフ、そして素行の悪い怪力サムの四人である。おっと、盲導犬ピイチャンも忘れてはいけない。

 そんな時、女性の預言者(神の言葉を預かり、民に知らせ示す人)が選ばれた。トトの妻、ディーラである。

「わが心は、イスラエルの指揮する者らとともに、この民の進んで身をささげる者と共にある(士師記)」

< 88 / 375 >

この作品をシェア

pagetop