蝶々結び
辺りをキョロキョロと見渡していると携帯が鳴り出し、ディスプレイも確認せずに慌てて電話に出た。


「もしもし!?」


「あっ、七星?俺だけど……」


「はいっ!!」


緊張のせいで、少しだけ裏返った声で返事をしてしまった。


「お前が今立ってる所から右側見て!」


上杉先生に言われた通り、右側を見ると…


「あっ……!」


あたしの視線の先には、車の中から手を振る先生がいた。


「わかった?じゃあ、早くこっちにおいで♪」


上杉先生はそう言うと、電話を切って手招きをした。


あたしも携帯を閉じて、ゆっくりと歩き出した。


車なんて聞いてない……


緊張感が益々高まって、上手く歩けなかった。


「早く乗れよ」


あたしが車の前に立つと、上杉先生は助手席の窓を開けて言った。


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