蝶々結び
「じゃあ、行きますか♪」


上杉先生は、助手席に座ったあたしがシートベルトを締めるのを確認した後、車を出した。


あたしは、車と言う狭い空間で先生と二人きりだと言う事に、とにかく緊張していた。


上杉先生が、すごく近い。


ほんの少しでも体を動かせば触れてしまいそうな距離に、ドキドキする。


上杉先生に話し掛けられてもただ頷くだけで、上手く話せない。


今まで、先生とどうやって接してたのかな……?


思い出そうとしても、緊張が邪魔をして頭が働かない。


結局、あたしは何を話したのかすらよくわからないまま、ずっと頷いていただけだった。


「着いたぞ♪」


上杉先生にそう言われて、車から降りた。


やっと緊張から解放される……


眩しい太陽に照り付けられながら、内心すごくホッとしていた。


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