蝶々結び
何本か植えてある木の中で、一番桜が満開になっている木の前に立った。


「あれ?」


あたしが立っている所と反対側に、誰かの足が見える。


入学式に学校に来るなんて、部活かな……?


そんな事を考えながら、反対側に移動した。


風が中庭を横切るように吹き、あたしの髪が靡(ナビ)いた。


木の裏側にいたのは、見た事の無い男の子。


あたしが目の前に立っているのに、瞼を閉じたまま反応が無い。


真っ黒でサラサラの髪は風に靡き、少しだけ焼けた肌は陽射しを直接受けている。


転入生……?


寝てるのかな……?


「あの……」


「ん……」


恐る恐る声を掛けると、男の子は眩しそうに眉を歪めて、ゆっくりと瞼を開けた。


あたしを見た彼の瞳が透き通るように綺麗で、一瞬だけ戸惑ってしまった。


< 6 / 494 >

この作品をシェア

pagetop