Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
『コンコン。』
夕方、私の部屋を誰かがノックした。
「…………誰?」
力の無い私の声。
ちゃんとドアの外まで届いたのかな。
「私、亜季だよ。プリント持ってきたよ。」
「…………。」
正直今は誰とも会いたくなかった。
でも何だろう亜季の声を聞いたら不思議と安心したんだ。
ガチャっと普段かけてもいない鍵を開けて、私は亜季を迎え入れる。
「よっ、心配したんだぞ?」
いつもと何も変わらない笑顔を見せてくれた亜季に私は無意識に抱きついた。
「よしよし、いっぱい話聞いてあげるから。部屋入ろう?」
亜季は私の頭を撫でながら、ちょっとだけギュッてしてくれた。
部屋の電気を付けて、化粧道具とか片付けてないMDとかで散らばった机を挟んで座る。
「今日はどうしたの?」
「……………うん、あのね。」
それから亜季は夜の9時くらいまでずっとずっと私の話を聞いてくれた。
時折うなずいたり、「分かるよ」って言ってくれたり真剣に、真剣に私の話を聞いてくれた。