Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
「……あ、あれ?」
私が窓から美穂達を目で追い掛けていると、いつの間にか優斗の姿が教室になくなっていた。
「ねぇ沙織(さおり)、優斗知らない?」
教室に残っていた友達に聞くが両手を広げて首を振る。
「白鳥ならさっき拓哉と2人で出ていったぜ?」
トイレから戻ってきたのだろう、住吉君がハンカチで手を拭きながら扉の前でそう言った。
「拓哉と――?まさか、あの2人また喧嘩なんて……」
『バタン』勢いよく扉を閉めて私は迎う場所も決めずに走りだした。
「いやだ……あの2人が喧嘩なんて。」
空いている教室をしらみつぶしに探していく。
パソコン室は鍵がかけられていて中に入れなかった。
音楽室は吹奏楽部が練習していた。
美術室ではたった1人の美術部員の有村さんが次の作品を練っているようだった。
他のクラスにもいない。
男子トイレも見てもらったけど、そこにもいない。
「どこ?どこなの拓哉、優斗。」
雨は降っていたけど屋上を探してみようと思った。
息を切らしながら四階から屋上へと上がる階段の踊り場で、私の視界に2人がうつった。
「――いた!!体育館への渡り廊下に2人がいる。」
私はすぐに方向を変えるとまた走りだす。
「拓哉、優斗。もう2人で喧嘩なんかしないで……」