【天使の片翼】

「ジル」


名前を呼ばれた鷲は、金色に光る目玉を主に向けると、全てを承知したかのように、
大きく一つ羽ばたいた。


「さて、行くか。ソラン」


「・・・」


「どうした?ファラを助けに行くのだろう?

俺一人では難しい。あのお転婆のために力を貸してくれ」


「は、はい!もちろんです!」


ですが、と喉まででかかった台詞を何とか飲み込んで、ソランはカルレインの背を追った。



・・命を懸けずに戦え、ってことか?

そんなこと!



どう考えても不可能だ、とソランは心の中で舌打ちをした。

相手は、敵意を持っているのだ。

それも、ファラを人質にとって。


そんな状況で、一体どうしろというのか。


ソランは、地平線に顔を出し始めた太陽を直視できず、目を細くした。


血のように、赤い光。


朱色の輝きを背に、ジルは天から与えられた両の翼を自在に操って

二人のはるか上空を泳ぎ始めた--。









< 307 / 477 >

この作品をシェア

pagetop